秦郁彦の阿羅批判 南京事件論争に詳しい歴史家の秦郁彦は『昭和史の謎を追う(上)』(1993) の中で阿羅氏の著作についてこう発言している。
−−−−−−−−−昭和史の謎を追う(上)−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「十二年十二月と十三年一月に南京にいた人に聞けば本当のことがわかるのではなか ろうかと考え」て、軍の幹部百五十人、報道関係者三百人、外交関係者二十人ぐらい を探し、うち六十六人をヒアリングの対象者にしたとある。
その精力的な東奔西走ぶりは感服するが、「数千人の生存者がいると思われる」兵士 たちの証言は「すべてを集めることは不可能だし、その一部だけにすると恣意的にな りがちだ。そのため残念ながらそれらは最初からカットした」という釈明には仰天し た。
筆者の経験では、将校は概して口が堅く、報道、外交関係者は現場に立ち会う例は稀 で、クロの状況を語ったり、日記やメモを提供するのは、応召の兵士が大多数である。 その兵士も郷土の戦友会組織に属し口止め指令が行きわたっている場合は、いいよど む傾向があった。
《中略》
阿羅は最初から兵士にアプローチするつもりはなかった、と宣言しているのだ。 その結果、阿羅の本は「虐殺というようなことはなかったと思います」、「見たこと はない。聞いたこともなかった」、「聞いたことがないので答えようもない」式の証 言ばかりがずらりと並ぶ奇観を呈している。ここまで徹底すると、クロを証言する人 は避け、シロを主張している人だけをまわって、「全体としてシロ」と結論づける戦 術がまる見えで、喜劇じみてくる。
−−−−−−−−引用終わり−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
私と違って実際にいろんな証言者から聞き取り調査をしているだけあって、阿羅が証 言者を選り好みしている様をはっきりと批判している。
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